ECONALK.
Politics

[韓国政治] 羅卿瑗氏、故イ・ヘチャン氏を弔問:「協治」はソウル・ショック下の生存戦略となるか

AI News Team
[韓国政治] 羅卿瑗氏、故イ・ヘチャン氏を弔問:「協治」はソウル・ショック下の生存戦略となるか
Aa

敵対を超えた敬意:ソウル大学病院の弔問風景

1月29日、厳しい寒波に見舞われたソウル・恵化洞(ヘファドン)。ソウル大学病院の葬儀場には、韓国リベラル派の「ゴッドファーザー」と称された故イ・ヘチャン(李海瓚)元民主党代表を悼む長い列が続いていた。その列の中に、与党「国民の力」の重鎮、羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)議員の姿があった。かつて国会本会議場でイ氏と激しく対峙し、保守陣営の先鋒として自由韓国党(現・国民の力)の院内代表を務めた彼女の弔問は、単なる儀礼以上の静かな重みを帯びていた。

羅議員は祭壇に献花し、深く頭を下げた後、遺族の手を握り短く言葉を交わした。弔問を終え、張り詰めた表情で取材陣の前に立った彼女は、故人について慎重に言葉を選びながらこう語った。「故人とは政治的な立場で激しく対立したこともあった。しかし、彼は民主党の価値に最も忠実な政治家であり、その信念の強さには敬意を抱いていた」。

この「民主党の価値に最も忠実」という表現は、現在の韓国政界において二重の意味を持つ。一つは、イ氏が徹底した理念家として陣営を率いたことへの、敵将としての純粋な評価である。羅議員自身、2019年の選挙法改正などを巡る「ファストトラック政局」でイ氏率いる民主党と物理的衝突も辞さない激闘を繰り広げた当事者だ。水と油のように混じり合わないとされた二人が、死という不可逆的な境界線を前に、政治家としての「格」を認め合った瞬間であった。

もう一つの意味は、2026年現在の韓国が直面している複合危機への無言のメッセージだ。トランプ米政権(第2期)による関税強化策が韓国の輸出産業を直撃する「ソウル・ショック」の最中、汝矣島(ヨイド、韓国国会)は依然として極端な陣営論理に支配されている。羅議員のこの発言は、相手を全否定する「悪魔化」が常態化した政治風土に対し、相手の存在意義を認めることでしか対話の糸口が見つからないという、現実的な危機感を反映している。

「民主党の価値」を認めた保守の論理

保守政権の重鎮である羅卿瑗氏が、対立陣営の象徴的指導者であった故イ・ヘチャン氏の霊前に捧げた言葉は、単なる弔辞の修辞を超えた重みを持っている。極端な「陣営政治」が限界に達した2026年の韓国において、この発言は保守陣営が敵対者の存在意義を公に認めた稀有な瞬間として記録されるだろう。羅氏の論理は、相手の政治的信念を否定するのではなく、むしろその信念の徹底ぶりを称えることで、政治的対話の土台を再構築しようとする「リアリズム」に基づいている。

この変化の背景には、2026年に入り激化する「トランプ2.0」時代の外圧がある。米国第一主義による関税障壁と、昨今の経済混乱、いわゆる「ソウル・ショック」が韓国経済を直撃する中、内部分裂を放置することは国家的な自殺行為に等しいという危機感が保守層の間でも共有され始めている。羅氏による弔問は、こうした危機を乗り越えるために不可欠な「内部統合」に向けた戦略的な一歩といえる。

ソウルに駐在する日本の大手商社幹部である山本裕介氏(仮名、52)は、この光景を複雑な心境で見守っている。「韓国の政治リスクは日本企業にとっても最大の懸念事項です。政策の継続性が陣営交代によって断絶される不安定さが、投資を躊躇させてきました。しかし、保守の代表格がリベラルの重鎮に敬意を払う姿は、ようやく韓国政治が『予測可能性』のある成熟した段階へ移行する兆しではないかと、淡い期待を抱かせます」と、実務者の視点から分析する。

ソウル・ショック:協治を強制する経済危機

2026年の年明けとともに韓国経済を襲った複合危機、通称「ソウル・ショック」は、単なる景気後退の枠を超え、国家の生存戦略を根本から揺るがす構造的な激震として広がっている。この経済的緊急事態こそが、長らく対立の象徴であった羅卿瑗議員をして、進歩派の巨頭・故イ・ヘチャン氏の霊前に頭を垂れさせた真の要因と言えるだろう。

「ソウル・ショック」の震源地は、第2次トランプ政権が突きつけた「アメリカ・ファースト」の冷徹な現実だ。2025年後半から段階的に強化された対米輸出関税に加え、2026年初頭に発表された新たな半導体サプライチェーン規制は、韓国の輸出主導型経済にとって致命的な打撃となった。ウォン相場は対ドルで急落し、エネルギー輸入コストの高騰が国内消費を直撃している。

ソウル市内の汝矣島にある日系商社で現地法人代表を務める山本博氏(仮名、52)は、この数週間の混乱を次のように証言する。「かつての通貨危機とは質が違います。今回は、米国の保護主義という政治的要因が絡んでいるため、純粋な経済対策だけでは出口が見えないのです。朝に決めた見積もりが、夕方には為替変動で赤字になる。韓国企業のパートナーたちも、『今は与野党で争っている場合ではない』と悲痛な声を上げています」。

韓国銀行が発表した2026年1月の企業景況感指数(BSI)は、過去10年で最低水準を記録しており、特に製造業における悲観論が際立っている。

ソウル・ショック:ウォン対ドル相場の急変(2025 Q4 - 2026 Jan)

野村総合研究所のエコノミストによる最新の分析では、韓国の政治的麻痺が続いた場合、2026年のGDP成長率はマイナス圏に沈むリスクがあると警告されている。外部からの圧力(トランプ2.0)と内部からの崩壊(ソウル・ショック)という二重の脅威に直面し、韓国政治は好むと好まざるとにかかわらず、「協治(キョチ)」という名の休戦協定を結ばざるを得ない局面に追い込まれているのである。

失われた「キングメーカー」とリーダーシップの空白

故イ・ヘチャン氏の逝去は、単なる一人の政治家の死にとどまらず、韓国政治における「調整の時代」の終焉を象徴している。長きにわたり民主党の戦略的支柱であり、時には党内派閥を束ねる重石、そして時には対立する与党との水面下のパイプ役として機能してきた「キングメーカー」の喪失は、2026年の汝矣島に巨大な力の空白を生み出した。

かつて日本の自民党における派閥領袖たちが果たした機能と同様に、イ・ヘチャン氏は激しい党派対立の中にあっても、最終的な決定を下し、合意を形成する「政治力」を体現する存在であった。彼の不在は、民主党内における求心力の低下を招くだけでなく、与党・国民の力にとっても、交渉可能なカウンターパートを失ったことを意味する。

外資系証券会社に勤務する佐藤健太氏(仮名)は、「投資家が今、韓国市場で最も懸念しているのは企業の業績よりも、決められない政治のリスクだ。イ・ヘチャン氏のような、良くも悪くも『話を通せる』実力者の不在は、不確実性を増幅させる」と指摘する。実際、2026年度予算案を巡る与野党の膠着状態は長期化しており、この「リーダーシップの空白」が実体経済に影を落とし始めている。

羅卿瑗氏が弔問に訪れた背景には、このような構造的な危機感が横たわっている。かつて激しく対立した政敵に対する敬意は、個人的な心情の発露であると同時に、現在の政治状況に対する逆説的なメッセージでもある。すなわち、強力な「キングメーカー」を失った今こそ、特定のカリスマに依存しない、システムとしての「協治(与野党協力)」を構築しなければならないという、生存本能に近い政治的リアリズムである。

トランプ2.0時代の生存戦略としての「統合」

トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」の第二幕は、同盟国に対しても容赦のない取引を迫るものであった。在韓米軍駐留経費の大幅増額要求や、韓国の主力産業である半導体・自動車への追加関税の示唆は、与野党の対立で機能不全に陥っていた韓国国会に冷や水を浴びせた。ワシントンの論理は明快である。「分断された交渉相手とは取引しない、あるいは、分断につけ込んで最大限の譲歩を引き出す」というものだ。

ソウルの汝矣島で活動する政治コンサルタント、朴ジフン氏(仮名)はこの動きを次のように分析する。「現在の韓国経済は、与党単独で解決できるレベルの危機を超えています。トランプ政権との交渉において、国会が分裂していれば、米国は野党を揺さぶり、通商交渉を有利に進めるでしょう。羅氏の行動は、対米交渉における『国内の結束』というカードを切るための、高度な政治的布石と言えます」。

日本にとっても、この韓国の「内部統合」の成否は他人事ではない。日米韓の安全保障協力が地域の安定に不可欠な中、韓国国内の政治的混乱は、対北朝鮮、対中国戦略における不確実性要因となるからだ。羅卿瑗氏の弔問は、2026年という激動の時代において、韓国政治が「感情的な対立」から「冷徹な国益計算」へと回帰しようとする、最初の一歩なのかもしれない。

一過性の美談か、政治文化の転換点か。その答えは、弔問後の数週間の議会運営の中に示されることになるだろう。共通の敵を前にした時、私たちは手を取り合うのか、それとも最後に残った椅子を奪い合うことに執着するのだろうか。