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[暗号資産] 韓国「特金法」改正の衝撃:米韓デカップリングと大株主審査の厳格化

AI News Team
[暗号資産] 韓国「特金法」改正の衝撃:米韓デカップリングと大株主審査の厳格化
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「オーナーリスク」の排除:韓国国会が可決した厳格な新ルール

2026年1月29日、韓国国会本会議場に響いた木槌の音は、東アジアの暗号資産(仮想通貨)市場にとって、ひとつの時代の終わりと新たな「規律の時代」の始まりを告げるものであった。特定金融情報法(特金法)の改正案が可決されたことにより、これまで不透明な部分が多かった仮想通貨取引事業者(VASP)の経営権に対する監視が、伝統的な金融機関並みに強化されることとなる。

今回の法改正の核心は、いわゆる「大株主適格性審査」の導入にある。これは、銀行や証券会社などの伝統的な金融機関に対し、設立時や株主変更時に大株主の社会的信用や財務健全性を当局が審査する制度だが、これを仮想通貨業界にも適用するという画期的な措置である。具体的には、金融当局がVASPの申告審査を行う際、大株主が金融関連法令に違反して罰金刑以上の刑を受けた事実がないかを確認し、問題がある場合は事業登録を拒否、あるいは既存の登録を取り消すことが可能になる。

これまで韓国市場では、取引所の実質的なオーナーが横領や背任、あるいは相場操縦に関与している疑惑が浮上しても、法的な欠格事由として明確に定義されていないために当局が介入できないケースが散見された。市場関係者の間では、こうした「オーナーリスク」が投資家の不信感を招き、健全な市場育成を阻害しているとの指摘が長年なされてきた。ソウルに拠点を置く法律事務所でフィンテック規制を専門とする(仮名)田中浩二弁護士は、「この改正は、誰が取引所を支配しているのかをガラス張りにするものであり、投資家保護の観点からは不可避な進歩だ」と評価する。

しかし、この動きは2026年の世界的な潮流とは逆行する側面も持ち合わせている。米国ではトランプ政権が「デジタル資産の自由化」を掲げ、過度な規制の撤廃へと舵を切っている。米国がイノベーションの促進を名目に参入障壁を下げる一方で、韓国は「信頼」を担保するためのハードルを高く設定した。この規制のデカップリング(分断)は、今後の資本の流れに複雑な影響を与えるであろう。

韓国金融委員会(FSC)は、改正法の施行に向けて具体的な審査基準の策定に入るが、既存の事業者にとっては存続をかけた厳しいスクリーニングが待ち受けている。特に、複雑な持株構造を持つ中小規模の取引所にとっては、コンプライアンスコストの増大が経営を圧迫する可能性がある。それでもなお、韓国政府がこの厳格化に踏み切った背景には、仮想通貨を「投機の対象」から「制度化された金融資産」へと昇華させ、国民の資産形成手段として定着させたいという強い意志が透けて見える。米国流の自由放任主義か、それとも東アジア流の厳格な管理主義か。韓国の実験は、日本の規制当局にとっても重要な先行事例となるはずだ。

8月の「審判の日」:大手取引所に迫られるガバナンス刷新

2026年8月、韓国の暗号資産業界は、かつてない規模の「審判の日」を迎えようとしている。改正された「特定金融情報法(特金法)」に基づき、仮想資産事業者(VASP)に対する更新審査が本格化するためだ。今回の法改正の核心は、従来の経営陣に対する審査を超え、取引所を実質的に支配する「大株主」の適格性を問う点にある。これは、銀行法に準じる厳格なガバナンス基準をクリプト業界にも適用しようとする金融当局の強い意志の表れであり、トランプ政権下で規制緩和へと急旋回する米国とは対照的な動きを見せている。

金融委員会(FSC)と金融監督院(FSS)が提示したスケジュールによれば、既存の取引所は8月末までに、複雑に入り組んだ株式保有構造を透明化し、大株主が金融関連法令に違反していないことを証明しなければならない。これまで韓国の主要取引所は、循環出資や非公開の持ち株会社を通じて創業者が支配権を維持するケースが散見されたが、新制度下では、こうした不透明なガバナンス構造自体が登録抹消の直接的なトリガーとなり得る。当局は「不適格」と判断された大株主に対し、議決権の制限や株式処分命令を出す権限を持っており、従わない場合は事業ライセンスそのものが剥奪されるリスクがある。

この規制強化は、現場に深刻な緊張をもたらしている。ソウルの法律事務所と提携し、日韓のクロスボーダー案件を扱う企業法務専門家、(仮名)鈴木浩二氏は次のように指摘する。「これまではKYC(顧客確認)やマネーロンダリング対策といった『業務の入り口』が規制の焦点でしたが、今回は『資本の出口』、つまり誰が利益を得ているのかという最深部にメスが入っています。特に、過去に金融事故や相場操縦の疑惑が持たれたオーナーを持つ取引所にとって、8月までの時間はあまりにも短い。米国が『イノベーションの解放』を掲げてSEC(証券取引委員会)の権限を縮小させているのとは真逆のベクトルです」

鈴木氏の指摘通り、この「ガバナンス刷新」の圧力は、市場の勢力図を塗り替える可能性がある。大手取引所であっても、大株主のリスクを排除できなければ、銀行からの実名口座契約が打ち切られる可能性が高く、それは事実上の市場退場を意味するからだ。実際、2025年後半から一部の中堅取引所では、審査をクリアするために創業者が株式を売却し、経営権を大手IT企業や金融機関に譲渡する「身売り」の動きが水面下で加速している。

トランプ2.0との衝突:深まる米韓の規制ダイバージェンス

2026年1月、世界の暗号資産市場は、かつてないほどの「規制の断絶」に直面している。ワシントンD.C.とソウル、この二つの首都が描くデジタル資産の未来図は、今や完全に異なる方向を向いている。ドナルド・トランプ大統領の再登板に伴い、米国が「クリプト・キャピタル」の復権を掲げて急速な規制緩和へと舵を切る一方で、韓国は改正特金法を通じて、事業者に対するかつてない厳格な監視体制を敷こうとしている。

トランプ政権下の米国では、第2次政権の発足直後から「イノベーション阻害要因の撤廃」が最優先事項とされた。ホワイトハウスは、バイデン前政権時代に築かれた証券取引委員会(SEC)による執行中心の規制アプローチを「過去の遺物」と断じ、デジタル資産を戦略的な国家資源として位置づける新政策を次々と打ち出している。米国内の業界関係者の間では、コンプライアンスコストの劇的な低下への期待から、新たなゴールドラッシュとも呼ぶべき高揚感が広がっている。

これに対し、韓国国会が可決した特金法の改正案は、市場の「質的浄化」を至上命題としている。今回の改正の核心は、VASPの最大株主に対する適格性審査の導入である。これは、単にマネーロンダリングを防ぐという実務的な次元を超え、経営権を持つ資本そのものの「道徳的健全性」を問うものであり、金融機関並みの高度なガバナンスを要求する世界でも類を見ない厳しい措置だ。2022年のテラ・ルナ・ショックやその後の国内外の破綻劇が残した深い爪痕に対し、韓国当局は「成長」よりも「信頼」を選択した形である。

この米韓の「規制デカップリング(分断)」は、東アジアの資本動向に複雑な影響を与えつつある。ある日本の大手暗号資産取引所の幹部は、「かつては規制の緩い国へと資金が流れる『底辺への競争』が懸念されたが、2026年の現実はより複雑だ」と指摘する。

(仮名)佐藤健太氏は、東京を拠点にアジアのフィンテック規制を分析する法務コンサルタントとして、この状況を次のように分析している。「トランプ政権の規制緩和は、短期的には市場価格を押し上げる起爆剤となるでしょう。しかし、韓国が目指しているのは、バブル崩壊後の『持続可能なエコシステム』の構築です。米国がアクセルをベタ踏みする横で、韓国が入念にブレーキの点検を行っているこの構図は、数年後の市場の生存率に大きな差を生むかもしれません」

市場の選別と淘汰:中小事業者の撤退と業界再編の予兆

韓国における「特金法」改正案、通称「オーナーリスク防止法」の施行は、単なる規制強化にとどまらず、VASPの市場構造そのものを根底から覆す「選別と淘汰」の引き金となると見られている。2026年現在、トランプ政権下の米国がデジタル資産市場の規制緩和と産業育成へと舵を切る中、韓国金融委員会(FSC)によるこの厳格なゲートキーパー機能の強化は、市場の健全化という大義名分の下、事実上の「寡占化」を加速させる可能性を孕んでいる。

改正法の核心は、VASPの代表者および大株主に対する適格性審査の導入である。これにより、金融関連法令違反の履歴があるオーナーが経営する取引所は、事業登録が取り消されるリスクに直面する。しかし、より深刻な影響は、審査基準を満たすために必要なコンプライアンス体制の構築・維持コストが、中小事業者の経営体力を奪う点にある。ソウルのフィンテック業界を定点観測する(仮名)佐藤健太氏は、次のように分析する。「韓国の中小取引所にとって、今回の改正は『死刑宣告』に近い意味を持ちます。コンプライアンス部門の拡充や定期的な外部監査への対応には莫大な固定費がかかり、流動性の低い中小取引所がこのコストを価格転嫁せずに吸収することは不可能です」

市場の透明性が高まることは、投資家保護の観点からは歓迎すべき変化である。過去に頻発した取引所オーナーによる横領や相場操縦といった不正行為のリスクは低減され、機関投資家が市場に参入しやすい土壌が整うからだ。しかし、これには「イノベーションの停滞」という代償が伴う。

トランプ大統領が掲げる「クリプト・ヘイブン(暗号資産の避難所)」構想の下、米国では新興企業の参入障壁を下げる動きが加速している。対照的に、韓国が選択した「厳格な管理」の道は、市場の安定性を優先するあまり、新たな技術やサービスが生まれるダイナミズムを削ぐ結果になりかねない。

日本への示唆:厳格なJVCEAモデルとの共鳴と差異

日本の暗号資産規制は、2014年のマウントゴックス事件、2018年のコインチェック事件という二つの大きな痛みを経て、世界に先駆けて厳格化の道を歩んできた。改正資金決済法の施行と、自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)による緻密なモニタリング体制は、投資家保護という観点において日本を「安全地帯」へと押し上げた。今回、韓国FSCが打ち出した大株主に対する審査強化は、まさにこの「日本モデル」への追随であり、東アジアにおける規制の質的な収斂(しゅうれん)を示唆している。

日本の金融商品取引法においては、金融商品取引業者の主要株主に対する適格性審査(Fit and Proper原則)は当然の要件として存在する。韓国の新しい動きは、これまで「実質的なオーナー」のリスクが見えにくかった同国市場において、ガバナンスの透明性を日本水準まで引き上げる試みと評価できる。これにより、日韓両国が「厳格な規制ゾーン」として足並みを揃えることは、マネーロンダリング対策(AML)などの観点から、国際機関からも好意的に受け止められるだろう。

しかし、現場の実務家からは、この「厳格化」がもたらす両義性について冷静な声も聞かれる。都内の暗号資産交換業者でコンプライアンス部門を統括する(仮名)佐藤健太氏は、次のように指摘する。「韓国の規制強化は、中長期的には日韓間のクリプト市場における接続性の可能性を開くでしょう。しかし短期的には、トランプ政権下で規制緩和へと舵を切る米国市場との乖離(かいり)が広がり、イノベーションの速度という点でアジアが取り残されるリスクも否定できません」

「クリーン・ゾーン」の代償:韓国市場はガラパゴス化するか

韓国が選択した「大株主審査強化」という道は、グローバルな暗号資産市場において、ひとつの巨大な賭けとも言えるものである。この厳格化がもたらす最大の懸念は、韓国市場の「ガラパゴス化」だ。かつて日本の携帯電話市場が独自の進化を遂げた結果、世界標準から孤立したように、韓国の暗号資産市場もまた、国際的な流動性から切り離されるリスクを孕んでいる。

しかし、この「孤立」を単なるネガティブな事象として片付けるのは早計であろう。金融委員会(FSC)が目指しているのは、無秩序な投機市場からの脱却と、伝統的金融機関が参入しやすい「クリーン・ゾーン」の構築である。米国が「イノベーションの実験場」としてリスクを許容する一方で、韓国は「信頼の避難所」としての地位を確立しようとしている。

アジア主要市場における規制コストと機関投資家信頼度指数 (2025-2026)

結論として、韓国の「特金法」改正がもたらす未来は、二極化の様相を呈するだろう。短期的には、規制コストに耐えられない中小取引所の淘汰と、投機的資金の海外流出による市場規模の縮小は避けられない。しかし、その痛みの先にあるのは、カジノ的な投機市場から、実需と資産形成に基づいた成熟した市場への脱皮である。

米国流の「自由放任」か、韓国流の「管理された信頼」か。2026年の暗号資産市場は、この二つのモデルのどちらが持続可能かという、歴史的な実験場となっている。もし韓国がこの厳格な審査を通じて、投資家保護と市場活性化の両立に成功すれば、それは「ガラパゴス」ではなく、次世代の金融規制の「スタンダード」として再評価される日が来るかもしれない。