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[韓国経済] 「トリプル増加」の幻影:半導体好況の陰で進行する建設業の崩壊

AI News Team
[韓国経済] 「トリプル増加」の幻影:半導体好況の陰で進行する建設業の崩壊
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4年ぶりの吉報、その数字の裏にある「歪み」

韓国統計庁が発表した「2025年 年間産業活動動向」は、表面的には韓国経済の底力を示す数字となった。全産業生産、小売販売(消費)、設備投資という主要なマクロ指標が揃ってプラスに転じる「トリプル増加」を記録したのである。これら3つの指標が同時に増加するのは、新型コロナウイルス禍からのリバウンド需要に沸いた2021年以来、実に4年ぶりのことだ。政府はこの結果を「輸出主導の景気回復が本格化した証左」として歓迎し、市場の一部にも安堵感が広がった。

しかし、この数値を詳細に分析すると、極めて危うい不均衡が浮かび上がる。それは、世界的なAIブームに牽引された半導体セクターの突出したパフォーマンスが、他の産業、特に内需の要である建設業の深刻な不振を覆い隠しているという「半導体錯視」の構造だ。

この数字を牽引したのは、疑いようもなく半導体セクターである。第2次トランプ政権の発足に伴う米中技術覇権争いの激化は、皮肉にも韓国の先端メモリ産業にとって追い風となった。生成AI(人工知能)市場の拡大に伴う高帯域幅メモリ(HBM)への爆発的な需要が、サムスン電子やSKハイニックスの生産ラインをフル稼働させ、それに伴う巨額の設備投資が統計上の数字を大きく押し上げたのだ。

1998年の悪夢再び:建設業の静かなる崩壊

マクロ指標が描く右肩上がりのグラフの陰で、雇用と地域経済を支える建設業は、1997年のアジア通貨危機以来とも言われる深刻な不況に沈んでいる。2025年の建設受注は前年比で16.2%も急減した。これは、韓国経済が根底から揺らいだIMF管理体制下以来、実に27年ぶりとなる歴史的な落ち込み幅である。

ソウル近郊で建設資材の卸売業を営む在韓邦人の佐藤健太氏(仮名・54)は、連日のように届く取引先の廃業通知に頭を抱えている。「ニュースで見る『輸出好調』や『設備投資増』という言葉が、まるで別の国の話のように聞こえます。半導体工場の建設現場以外、民間のマンションや商業施設の案件は完全に凍結しており、我々のような中小サプライヤーには恩恵が全く滴り落ちてきません」と佐藤氏は語る。

この「静かなる崩壊」の主因は複合的だ。依然としてくすぶり続ける不動産プロジェクト・ファイナンス(PF)の不実化懸念が新規開発の資金調達を困難にし、金融機関は建設部門への融資審査を厳格化している。加えて、トランプ政権(第2期)の保護主義的政策や世界的なサプライチェーン再編に伴う建設資材価格の高止まりが、建設会社の体力を奪っている。

韓国産業活動の二極化:半導体 vs 建設 (2025年)

内需の温度差:消費は本当に回復しているのか

産業間の断絶は、消費の現場にも色濃く反映されている。2025年の小売販売額指数は前年比0.5%の増加に転じたが、その内実は「消費の二極化」を示している。

統計を押し上げた主因は、乗用車をはじめとする「耐久財」の販売好調だ。特に、年末の個別消費税減税措置の終了を見越した駆け込み需要などが寄与した。一方で、市民生活の質を直接的に反映する食料品などの「非耐久財」や衣類などの「準耐久財」は、依然としてマイナス圏か横ばいで推移している。

ソウル市麻浦区でスーパーマーケットを経営する朴ジフン氏(仮名)は、買い物カゴの中身の変化を肌で感じている。「客単価は明らかに下がっています。以前なら国産の果物や牛肉を手に取っていた常連客が、今は輸入冷凍肉やセールの加工食品ばかりを選ぶようになりました」と朴氏は語る。物価上昇率自体はピークアウトしたとはいえ、累積したインフレによる「価格の高止まり」と実質所得の伸び悩みが、中間層以下の購買意欲を冷え込ませているのが実情だ。

「K字型」から「L字型」への懸念

経済専門家たちが現在最も懸念しているのは、この産業間の乖離が一時的な「K字型」回復(一部が上がり、一部が下がる)で終わらず、経済全体を低空飛行の「L字型」停滞へと引きずり込むシナリオだ。

輸出依存度の高い韓国経済において、半導体一本足打法はあまりにもリスクが高い。米国が掲げる「アメリカ・ファースト」の保護主義政策が、自動車や鉄鋼といった他の主力産業に関税障壁として立ちはだかる中、輸出の牽引力が一点に集中することは、経済全体の脆弱性を高めることを意味する。

韓国開発研究院(KDI)や民間シンクタンクのレポートが示唆するように、輸出主導の成長だけでは、もはや内需の構造的な弱さを補完できない。2026年の経済政策における最優先課題は、半導体への依存度を下げることではなく、崩壊の危機に瀕している建設および内需セクターの「軟着陸(ソフトランディング)」にある。

佐藤氏はこう警告する。「半導体が稼ぎ出した時間を、構造改革のために使えるか。それとも、単なる数字の化粧に費やすか。2026年は、韓国経済が真の回復軌道に乗れるか、それとも長期停滞の入り口に立つかの分岐点となるでしょう」。外需という「一本の柱」が揺らいだ時、それを支えるもう一つの柱である内需が折れていれば、屋台骨が崩れるのは時間の問題である。